2026夏「励み」

私が30歳頃に買った、一足の革靴があります。

当時、自分にとって履きやすくて、見た目にも少し背伸びをしたような、上質な靴が欲しかったことを思い出します。

 

その靴はとても足に馴染み、手放すことができないほどお気に入りになりました。これまでの間、靴底を何度も張り替えながら、大切に履き続けてきました。

 

しかし、今年の冬の終わりのことです。

革の表面が変色し、汚れや傷みも目立つようになってしまいました。「いよいよ、この大切な靴も手放すしかないのかな……」と、諦めかけていた時のことです。

 

SNSで靴修理について調べていると、ある靴の修理専門店が見つかりました。

さっそく店を訪れ、靴の状態を相談したところ、若く活きいきとした店主がこのように言ってくれたのです。

 

「色の変色や傷みなら、同じような色を革に染み込ませることで、何とか修理できそうですよ」

 

費用は決して安くはありませんでしたが、「もう一度あの靴が蘇ってほしい」と願い、店主を信じて修理をお願いすることにしました。

 

それから3週間後、再び店を訪れ、戻ってきた靴と再会しました。

 

修理された靴は、驚くほど美しく仕上がっていました。

 

思わず私は、「素晴らしい技術ですね、ありがとうございました」と心からの感謝を伝えました。

 

すると店主は、嬉しそうに微笑んで言葉を返してくれました。

 

「こちらこそ、ありがとうございます。そう言っていただけると、本当に励みになります」

 

この言葉を聞いたとき、私は改めて深く感じることがありました。

 

心からの感謝を伝えたことで、相手から「励みになります」という言葉が返ってくる。その言葉の奥には、「これからも努力を惜しまず、一所懸命に技術を磨き続けよう」という、店主の強い心構えが満ちあふれていました。

 

私は店主に深く感謝していますが、店主もまた、私に感謝の気持ちを持ってくださったのではないかと思います。

 

人は、言葉かけ一つで大きな「励み」を得ることができます。しかしその一方で、言葉一つで落胆したり、失望したりすることもあります。

 

日頃から、私は生徒の皆さんに「他者理解」の大切さについて話をしています。

 

いつの時代であっても、どんなに年齢を重ねても、そしてこれからどのような職場や社会に出て行ったとしても、相手を思いやり、尊重する気持ちを持ち続けることはとても大切です。

 

どうか、こうした温かい気持ちをいつも心に宿しながら、未来の活躍を願い、日々の勉学やスポーツ、そして学校農業クラブ活動などに全力で励んでください。

 

令和8年7月1日(水) 校長 堤祐二

 

 

「本格的な夏を迎える農場の様子」